記者レビュー
「あなたのことを教えて」。8月30、31日に放送された、日本テレビの「24時間テレビ」。今年のテーマを聞いたとき、素敵な言葉だなと好感を持った。それぞれが抱える困難や課題。それを「知ること」を、差別や格差をなくしていくための第一歩にする。無関心が広がる今の社会にとって、必要なことだと感じた。
そして実際の放送でも、さまざまな人の生きづらさ、困難に焦点をあてようという意図が見えた。明るく過ごしているように見えても、実はいろんな事情を抱えている。各企画を通して、改めて気づかされた。
チャリティーランナーを務めた横山裕さんは、まさに番組のテーマにふさわしい人選だったと思う。複雑な家庭環境で育ち、中学卒業後に就職したこと、父親の違う2人の弟が一時的に児童養護施設で過ごしていたこと、弟の生活費や学費を支援していたこと。
こうした事情を、私は最近まで知らなかった。少しでも子どもたちの力に、という横山さんの思いと、黙々と走り続ける姿に心を動かされた。
近年、24時間テレビに対しては、感動を過剰にあおっているといった批判もあり、一昨年には寄付金の着服問題が発覚し、さらに風当たりが強まった。そうした経緯もあって、番組内では寄付金の使い道が詳細に紹介され、放送内容もより多様な社会の課題に向き合う姿勢が見えた。
番組の意義を見つめ直さざるをえなかったこと。それがよい方向に働いているように思う。今回の放送の平均視聴率は世帯11・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。影響力の大きい番組だからこそ、「毎年恒例」ではなく、常に意義を問い続けてほしいと願う。